相続税に関するポイント
税理士であれば会計や税務に精通しているのは当然ですが、「相続に強い・詳しい税理士」というのは、実はそれほど多くありません。税理士の対応の仕方によって、相続税の納税額は少なからず違ってきます。相続に関する問題を円満確実に解決したいとお考えであれば、やはり相続に関する専門知識・経験の豊富な税理士に依頼することをおすすめします。
法人や個人事業の顧問税理士と相続担当の税理士を使い分けてご依頼されるお客様も結構いらっしゃいますので、相続に関してご不安なことがありましたら、当事務所にお気軽に無料相談をご利用ください。
1.相続人の確定
相続人の確定を行うために、亡くなった人(出生から死亡まで)と相続人の戸籍を集めないといけません。
戸籍は、税務申告だけでなく、不動産の相続登記、銀行や証券会社の相続手続きにも必要です。平成28年5月から、法務局で「法定相続情報一覧図」というものを無料で作成してもらえるようになりました。これを作成しておくと、戸籍一式の代わりに使えるので非常に便利です。
2.所得税の準確定申告
所得税の確定申告期限は毎年3月15日ですが、亡くなった方の確定申告は準確定申告と言い、相続人が連名で行います。申告期限は死亡日から4ヶ月以内です。
亡くなった年分だけでなく、前年分の申告がまだであれば併せて行います。
申告には公的年金の源泉徴収票が必要ですが、発行には日数がかかりますので、早めに発行依頼をする必要があります。
3.相続財産の把握と相続税評価
亡くなった方の相続財産を把握するとともに、財産評価を行います。この財産評価をいかに丁寧に行うかで相続税額が大きく変わってくることがあります。
① 不動産
固定資産税の納税通知書でほぼ判明しますが、固定資産税がかからない物件が漏れている可能性があるため、市役所等で「名寄帳(なよせちょう)」を発行してもらうのが確実です。
宅地については国税庁が毎年7月に公表する「路線価」を基に計算するのが一般的ですが、宅地の形状・面積・用途によって減額できる可能性があるので、現地調査もかかせませんし、知識と経験が問われるところです。
② 預貯金・現金
預金通帳や預金証書などから把握します。ゆうちょ銀行は窓口で「現存照会」を依頼すれば、全取引を確認することができます。
亡くなった日の預金残高は、金融機関の残高証明書をもって計上しますが、生前の入出金の状況を確認することが重要です。税務署は金融機関に照会することで口座の過去の入出金を把握し財産の計上漏れなどを指摘してきます。
直前に葬式費用として引き出した現金を財産に計上したり、最低でも過去5年程度の入出金の状況から、生前贈与や使途不明な出金の有無を確認しておくことで、無用な税務調査を回避するためには重要です。
また、配偶者など収入がない親族名義の預貯金が多額な場合、実質的には亡くなった方の財産(いわゆる名義預金)でないかという疑いがかかります。名義預金の可能性がある場合は、財産形成の状況を把握しておく必要があります。
③ 上場株式、投資信託
証券会社から届く郵送物や配当金のお知らせなどによって、取引のあった証券会社や所有株式を把握します。
死亡日の株式等の保有状況は証券会社の残高証明書を基に計上しますが、株式の発行会社の配当状況によっては株価の調整や未収配当金の計上が必要なケースがあります。
また、預貯金と同様に過去5年程度の取引履歴を確認します。亡くなる前3年間で証券会社から引き出された株式の売却代金が行方不明だったためご遺族に捜索をお願いしたところ、自宅のあちこちから多額の現金が発見された実例もあります。
④ 非上場株式
亡くなった方が会社経営をされていた場合は、非上場であっても会社の株式の評価を行う必要があります。
上場会社と違い取引価額が明確でないので、「取引相場のない株式の評価」として国税庁が定める一定の計算式によって計算するのが一般的です。
借地権、未収生命保険金や未払役員退職金など帳簿に計上されていない財産負債も影響しますので、非常に神経を使う作業になります。
⑤ 生命保険
保険証券や通帳からの保険料の振替状況によって確認します。
遺族の生活保障の観点から、500万円×法定相続人の数(相続人が3人の場合は1500万円)までは非課税となります。
亡くなった方以外の方が被保険者であっても、亡くなった方が保険料を負担していた保険があれば、支払った保険料が保険会社に一部貯蓄されていると考え、死亡日における解約返戻金相当額を財産として計上しないといけません(生命保険契約に関する権利)。
⑥ 退職金
会社から死亡退職金が支払われる場合は、亡くなった方の財産として計上します。
生命保険金と同様、退職金についても同額の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があります。
また、会社から弔慰金が支払われる場合は、退職金とは別に一定額までは非課税とされています。
4.相続税の申告・納付
相続税の申告期限は、原則として死亡日から10ヶ月以内です。
一定の計算により遺産総額に対する相続税額を計算し、その相続税額を遺産の取得割合に応じて各相続人等が負担します。
① 遺産分割協議がまとまらない場合
10ヶ月以内に全部又は一部の遺産分割協議がまとまっていない場合は、未分割財産として、民法上の相続分に応じて相続したとみなして、各人の相続税を計算しいったん納税します。
ただし、未分割財産には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できないため、納税額は大きくなる可能性があります。
ただし、その後分割協議がまとまり、当初の申告による取得割合が変わった場合は、修正申告、更正の請求をすることができます。また、当初の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくことで、修正申告、更正の請求をする際に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受けることができます。
② 金銭一括納付が難しい場合
相続税の納期限は、申告期限と同様に原則として亡くなった日から10ヶ月以内です。
しかし、相続財産のうちの不動産の割合が多いなど、金銭一括納付が難しい場合は、延納(一括払いの代わりに分割払い)、又は物納(金銭の代わりにモノで納付)が認められています。
5.二次相続のシミュレーション
二次相続とは、仮に父死亡の場合の相続を一次相続(相続人は母と子)とした場合、母死亡の場合の相続(相続人は子のみ)を指します。
一次相続だけで考えれば、できるだけ配偶者に相続財産を集めて、配偶者の税額軽減の特例を受ける方法が、最も納税額を低く抑えることができます。
しかし、近い将来発生する二次相続では、相続人が1人少なくなるため、納税額が増加する傾向にあります。
ですから、二次相続での相続税負担まで考えて、今回の一次相続でどれくらいの財産を母に相続させるかをシミュレーションしてみることが重要です。
6.税務調査を減らすための取り組み
相続税申告は、毎年行われる所得税や法人税の申告と異なり、一生に一度の亡くなった方の「人生の総決算」の申告と言えます。
一方、相続税の申告書は、計算結果のみを税務署に報告する様式になっているため、一人一人異なる生活スタイル、財産の形成状況、その他の各家庭のご事情などをすべて反映することなど到底できません。
当然、税務署も計算結果のみの相続税申告書だけでは、不明点を解消することができず、税務調査を実施するということもしばしばあります。
弊所では税理士による書面添付制度を積極的に活用しています。書面添付とは、税務署が疑問を持つと思われる点について、申告書作成に際して税理士が確認した資料、検討し判断した内容、その他申告書に表せないご家庭ごとの過去の経緯などを記した文書を申告書に添付するものです。
これにより、税務署も申告書の内容がよりよく理解でき、無用な税務調査を省略することができ、かつ、納税者の方にも税務署差による心労をおかけせずに済むといったメリットがあります。
7.金融機関の手続き代行
相続では、市役所や年金事務所への届け出だけでなく、預貯金の解約手続きや不動産の名義変更手続きが必要です。『やり方が分からないので専門家に任せたい』『忙しくて日中時間が取れない』などのお客様向けに、預貯金の解約手続きを代行(有料)したり、不動産の名義変更について提携の司法書士に取り次ぎ(無料)をいたします。
(※司法書士の手数料、法務局の実費は別途必要です。)
8.生前の相続対策について
相続対策は生前から余裕を持って始めるに越したことはありません。
何から初めて良いか分からない場合は、まずはお気軽にご相談ください。
① 相続税の試算
もし今、相続が発生したら相続税がどれくらいかかるかを知ることが何より一番大事なスタートです。
② 特例の適用要件の確認
もし今、相続が発生したら、重要な小規模宅地等の特例が適用できるかなどをあらかじめ検討しておきます。
③ 納税資金の確認
予想される相続税額に見合う預貯金や生命保険が確保されているか確認し、不足している場合は資産の売却も視野に入れ対策を検討します。
⑤ 生前贈与の検討
相続財産の圧縮を図るため、計画的に配偶者・子・孫に対して生前贈与を検討します。
生前贈与には暦年贈与と相続時精算課税贈与という2つの方法があります。納税者に有利な特例も様々ありますが、計画的に行わないと取り返しがつかないこともありますので、専門家に相談した上で、計画的に行いましょう。
⑥ 事業承継にかかる特例の検討
近年、会社経営や個人事業の事業承継にかかる税負担を軽減できる特例が注目されています。これらの特例は相続が発生してからでも適用できますが、やはり生前から要件を満たすかどうかを検討しておきましょう。
⑦ 養子縁組の検討
孫と養子縁組するなどして法定相続人を増やすとともに、財産を一代とばして孫世代に相続させる方法も検討します。
なお、民法上は養子の人数に制限はありませんが、税務上、法定相続人の人数にカウントできる養子の数には一定の制限があります。
⑧ 遺言書作成の検討
遺産相続によって遺族がもめないように、誰にどの財産を相続させるかを遺言に遺しておくことも有効です。
遺言には簡易な方法もありますが、公証人役場で作成する公正証書遺言が安全確実です。当事務所提携の司法書士に依頼すれば簡単に作成することができます。
⑨ 不動産の有効活用の検討
遊休資産となっている不動産がある場合、毎年の固定資産税の負担だけでなく、将来の相続税の負担も大きくなりがちです。
いざ納税資金に困ってから売り急ぐよりは、計画的に売却するか、駐車場、マンション、テナント等で有効活用できないかを検討しましょう。
料金について
弊所では、①遺産総額②相続人の数③土地の筆数④預金口座の数⑤非上場株式の有無などによる見積もり表によって、わかりやすい料金体系を心がけています。おおむね遺産総額の0.8%~1%程度に収まることが多いですが、見積もりは無料ですので、お気軽にご連絡ください。